お問い合わせでも多い悩みのひとつ。
やはり看護学生が最も苦手とするのは『病院実習』ですよね。
今回の記事は、『看護計画や実習目標が立てられない苦手意識の原因』についてです。
苦手と思うことにはそれなりの原因があるものです。
学生が気付いていないかもしれない&思い込んでいるかもしれない原因について、私の経験を踏まえてお伝えできたらいいなと思います。
原因その1:ケアを中心に考えている
実習で学生が失敗しがちなのが『何かケアをしなくてはいけない!!』という思い込み。
私も学生の時はそうでした。
実習では、『何かしらの結果を残さないと、実習した!という感じにならない』そんな雰囲気があります。
それは周りがそういう雰囲気を作っている部分もあるし、学生自らが『何かを成し遂げた感じ』を求めている部分もあります。
特に実習中にやりがちな『足浴』や『手浴』
実習中は何をするのも指導者や学生指導の教員と一緒にケアを行わなくてはならないのですが、この『足浴』や『手浴』は比較的お手軽に実施できてしまうため、多くの学生が実習の行動計画に挙げてしまいがちです。
果たして『足浴』や『手浴』は受け持ちとなった患者さんに必要なケアでしょうか。
どのような患者さんであっても、ケアの必要性についてしっかり考えた上で計画に挙げるべきです。
『なぜ足浴が必要なの?』『なぜ手浴が必要なの?』
そう指導者や教員に問われたときに、しっかりと答えることができるでしょうか。
患者さんに必要なケアであれば問題はありません。
仮に必要でなくても、足浴や手浴をするのは気持ちがいいですよね。
しかし、看護実習では『気持ちいいから』という理由だけでは不十分だと思うのです。
毎日の行動計画を立てるのは大変です。毎日同じようなことしか計画にあげられず、明日はどうしよう、何をしようと考えてしまいますよね。
でも、そう悩んでしまうのは、患者さんのことを置き去りにして目の前の実習をこなすことしか考えていないからかもしれません。
何かケアを行うと実習記録も書きやすいと思います。
けれど、そのケアは本当に必要なことなのか、しっかり患者さんに向き合った上で考え、行っていく必要があると思います。
そうすることで計画や目標もより具体的に記載できるようになります。
何もしない1日があったっていいんじゃないでしょうか。
話をするだけの1日でも十分意味があると思いますよ。
原因その2:他の人が考えた目標や記録を参考にしてしまう
これでいいのだろうかという不安から、ついつい他の人が考えたものを参考にしてしまうことがあると思います。
市販の看護に関する書籍を活用したり、学生同士でいろいろと相談し合うことも非常に大切です。
けれど、これらは自分の考えや方向性をしっかり定めた上で活用することが重要です。
参考にすること自体は悪いことではありませんが、自分の考えが定まっていないうちに他の人が考えた完成形を見てしまうと、柔軟な考えが生まれにくくなると私は思っています。
また、実習の辛さから早く解放されたい!とにかく早く寝たい!早く終わらせたい!という思いでいろいろなものを参考にしてようやく書き上げた目標や記録に受け持ちとなった患者さんが反映されているでしょうか。
目標や記録を読んだだけで、患者像が見えてくるような内容であることがとても大切です。
そして、そのような記録が指導者や教員からの評価が高いのです。
原因その3:コミュニケーションや情報収集不足
苦手意識の原因の大半を占めると思われる『コミュニケーション不足』と『情報収集不足』
実習は患者さんを知ることから始まります。
そして、患者さんのことを知れば知るほど、より良い目標や計画が立案できるようになります。
普段の生活の中でも同じですよね。
『3人兄弟』『お酒が好き』『父親、母親』『看護師、教師』『お風呂が好き』『犬が苦手』などいろいろな人がいます。
家族や友人のことは生活背景をよく理解した上で、その人に合わせた関わり方をしていると思います。
実習で出会う患者さんは、家族や友人と同じようにいろいろな役割や嗜好を持ち、様々な環境で育った人でたまたま患者という役割を担っているだけ。
そう考えると、患者さんのことを知るというのはそんなに難しいことではないと思います。
しかし、患者さんと看護師の関係は家族や友人と違うことは明らかです。
学生が行うコミュニケーションや情報収集は、看護師のプロとしての技術を学ぶものでなければいけません。
ただの雑談で終わることなく、意図的なコミュニケーションによって欲しい情報を引き出す必要があります。
それを学ぶ場が臨床実習です。
基礎看護学で学ぶコミュニケーション技術は、個人的に非常に重要な学習だと感じています。
学生のときはコミュニケーションの重要性にあまり気付かず過ごしてしまうと思いますが、実際に働き始めると看護師のコミュニケーション技術の力量は患者さんの満足度にかなり影響します。
学生だからこそ、1人の患者さんにしっかり時間を割いて関わることができます。
その時間を有効に使って、できる範囲で構わないので患者さんのことをしっかり理解していきましょう。
そうすることで患者さんに何が必要なのかが分かり、目標や記録の内容が深まり充実してきます。
原因その4:なぜという視点で考える余裕がない
私は疑問点をそのままうやむやにしておくのは嫌いなタイプです。
そのため、とことん『なぜ』を追求するのが好きです。
私生活では『面倒くさいタイプ』に分類されると思いますが、看護師としては面倒くさいぐらいのしつこさがある方が良いと思っています。
『なぜ』を追求するのは時間がかかります。『なぜ』という疑問が漠然としていればなおさら時間がかかります。
学生は『なぜ』が漠然としすぎているがために、深く考えることを途中でやめてしまうのではないかと感じています。
どうして疑問が漠然としてしまうのかというと、『原因その3』でお伝えしたことがしっかりできていないからではないかと思うのです。
学生の実習目標や計画は、指導者や教員が見ると『どうしてこんな内容になったんだろう』と疑問だらけなのですが、学生本人はそのことに気が付きません。
なんとなく気付いていたとしても、掘り下げて考えるのに必要な情報が不足していたり、時間に追われていることで中途半端な目標や計画をあげざるを得ない一面もあるのかもしれません。
しかし、情報が不足していようとも『なぜ』という疑問をそのままにしてスルーすることは極力避けるべきです。
一般的な事柄を事前学習することで、実際との違いを学ぶ機会にもなります。
実習期間中は時間が足りなくて、睡眠時間も削って、早朝まで寝ずに頑張っている人もいるでしょう。
けれど、時間の不足によって『なぜ』という思考を閉ざしてしまうのはもったいない。
だからこそ、患者さんをしっかり理解して具体的な疑問を持てるようになりましょう。
患者さんを理解できると、学ぶべきことがはっきり分かってくるので効率も良く時間に余裕も出てきます。
まとめ:共通しているのは患者さんを理解すること
4つの原因をお伝えしましたが、全てに共通するのは『患者さんを理解すること』です。
看護の対象は人ですから、人間への理解を深めることで辛い実習も充実したものへと変化すると思います。
実習中は周りの学生と自分を比較したり、ついつい見栄を張った記録や目標を書いてしまいがちですが、患者さんを思いやる気持ちは必ず記録から伝わってきます。
指導者や教員に気に入られるよりも、患者さんに気に入られる学生であってほしいなというのが私の願いです。