マンガで考える看護実習目標シリーズ第1弾!
架空の事例の一部分をもとに自由気ままに実習目標を考えます!
今回のお題は『脊椎椎体骨折』
受け持ち患者の丸田さんはコルセットの装着を拒否しているようです。
さぁ、こんな時あなたならどんな目標を立てますか??
※このマンガの登場人物やお話はフィクションです。
腰椎圧迫骨折とは
腰椎圧迫骨折とは、骨密度の低下によって骨の強度が弱くなり、外部からの圧力で生じる骨折のこと。
高齢者やホルモンの影響で骨密度が低下しやすい女性に起こり、骨粗鬆症を起因としたものが多いと言われています。
転倒や尻もち、些細な日常生活の動きだけで骨折してしまうこともあるようです。
ちなみに以前は骨折の形態により『圧迫骨折』と『破裂骨折』と区別されていましたが、現在はどちらも『脊椎椎体骨折』と統一されているようです。
でも、ついでなので言葉の定義をおさらいしておきましょう。
- 圧迫骨折=骨折が椎体の前壁にとどまり、通常神経症状は伴わない
- 破裂骨折=骨折が進行して椎体後壁が破壊され、骨片が後方に突出して脊髄神経や馬尾神経を圧迫する
『低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増加する疾患』
1991年 骨粗鬆症のコンセンサス会議にて定義された。
YAM値(ヤム:young adult mean)70%以下に低下した場合を骨粗鬆症と呼ぶ。
※YAM値=若い人の骨密度を100%としたとき、骨密度がどれくらい低下しているか
※DXA(デキサ)法=X線を用いて骨密度を測定する方法
コルセットの目的
コルセットには骨折部の負担を減らして変形を防ぎ、安静を保つ役割があります。
コルセットの種類には、硬性コルセット、ダーメンコルセット(分類としては軟性コルセット)、軟性コルセット等があり、装具を扱う業者によって色やデザインに若干の違いがあることもあります。
受傷後1か月は骨折部は不安定な状態になっているので、正しくコルセットを使用することが重要です。
寝る、起きる、立つ、座る、寝返りをする、前かがみになるなどの動作時に起こる痛みは、折れた骨が動いているために生じます。
早い人で受傷2週間後くらいから骨が形成され始め、3、4週間後にはほとんどの人に骨の形成が見られます。
この時期に自己判断でコルセットを外したり、無理な動作をすると骨折部に負担がかかり症状が悪化する可能性があります。
早くきれいに直すためには、医師の指示や安静度を守り、痛みの回数を減らすことがとても重要です。
多くの場合は2、3か月程度で骨癒合および症状の軽快が期待できるので、患者さんに受傷後の見通しを説明し理解を得ることも大切ですね。
痛みを生じやすい動き
- 身体を丸める動き、前かがみの動作
- ひねる動き
この2点に気をつけて、患者さんが安静を守れるよう介入していきましょう。
身体を丸める動きとしては、靴の着脱や洗髪時の前かがみの動き、下にある物を拾う動きなどがあります。
この場合は、腰を曲げずに足を曲げてしゃがんだり、足を持ち上げて靴を履くなど常にまっずぐ伸びた姿勢を保つことを意識しましょう。
ひねる動きとしては、寝返りや起き上がり時の動きや後ろを振り向く動きなどがあります。
この場合は、上半身と下半身をゆっくりと一緒に動かすように意識しましょう。
得られた情報や知識を整理して考えてみよう
実習では患者さんの思いに寄り添った目標を立てなければいけません。
そのためには患者さんの思いをきちんと整理しておくと良いです。
患者さんの気持ちと治療や看護の方向性がいつも同じとは限りませんので、優先すべき事項を分かりやすくするためにもS(主観的)情報とO(客観的)情報をしっかりとまとめていきましょう。
丸田さんの情報
S情報:痛みはない、コルセットが苦痛(痛い、窮屈)、治っている(大丈夫)と思っている、コルセットをつけなければいけないのは分かっている
O情報:78歳、独居、転倒の既往あり、受傷から2週間経過、ベッド周囲のADLは自立、コルセットをつけずに動いている、ベッドに前かがみになりながら上がっている
丸田さんがコルセットを使用しない主な理由は、『痛みがない』『窮屈』という2つが考えられます。
痛みがなければコルセットは装着しなくても良いのでしょうか。
窮屈であれば安楽を優先して装着しなくても良いのでしょうか。
コルセットを装着しなければいけないのは理解しているようですが、なぜ装着しなければいけないのかは曖昧なのかもしれません。
そして、丸田さんは1人暮らし。
退院後自宅で過ごすのであれば症状を悪化させないことや新たな骨折を起こさないための適切な指導が必要になりそうです。
問題点を整理しよう
問題点といっても難しく考える必要はありません。
今、丸田さんに必要なことは何でしょうか。
そして、丸田さんが望んでいることは何でしょうか。
簡単に情報を整理してみましょう。
丸田さんが望んでいること『コルセットなし(身体的苦痛がない状態)でいること』
結局、丸田さんが望む形(コルセットなし)に辿り着くためには、丸田さんに必要なこと(コルセットを正しく装着する)をコツコツ続けていくしかないんですね。
また、正しく装着できたとしても装着時の苦痛が消失しなければ同じことの繰り返しになってしまいます。
コルセットの必要性を理解して納得してもらうこと、苦痛が最小限になるような工夫を行うことなどがポイントになりそうです。
実習目標を考えよう
丸田さんの望む形に近づけることを意識すれば自然と実習目標の内容が充実してくるはずです。
実習期間中に大きな変化を望むのは難しいので、1日で達成できる目標をコツコツを積み重ねて小さな変化を捉えていきましょう。
また、個別性と具体性を取り入れた内容にしておくと実習後の評価もしやすくなりますので、アレンジしながら様々な目標を考えてみましょう。
学生目標の例
- 効果的なコミュニケーション技術を用いて、患者の生活背景や疾患に対する捉え方を知ることができる。
- パンフレットを作成し、それを用いて現在の病状について理解を深めることができる。
- 発達段階(老年期)を考慮し、コルセットを装着する目的や現在の安静度、今後の見通しを分かりやすい言葉で説明できる。
- 受傷時の状況を振り返りながら、患者と共にベッド周囲の環境整備を行うことができる。
- パンフレットを用いてコルセットの装着方法を説明できる。
- ペインスケールを用いて腰痛の有無や痛みの強さを客観的に捉えることができる。
- 起き上がり時はコルセットを正しく装着していることを確認し、ベッドコントローラーを使用するよう声かけができる。
- コルセット装着による不快感や圧迫に伴う疼痛がある場合は、臥床した状態で正しい位置に装着し直すことができる。
- 痛みを生じやすい動き(背中を丸める、前かがみになる、腰をひねるなど)について説明し、姿勢を確認しながら移乗の見守りができる。
患者目標の例
- コルセットの必要性を理解できる。
- コルセットを正しい位置で装着することができる。
- コルセットの装着方法を理解することができる。
- コルセットによる不快感や疼痛を感じるときの対処方法を知ることができる。
- 現在の病状や今後の経過について理解することができる。
- 痛みを生じやすい動きを理解し、移乗時は臀部からゆっくりと着座することができる。
今回は、椎体骨折で指示通りにコルセットを装着できない患者さんをテーマに目標を立ててみました。
実際の実習ではもっともっと細かい情報がたくさん得られるはずなので、その情報を活用して患者像がはっきりと分かる目標を立ててみてくださいね。